犬の避妊・去勢手術とは?メリットや費用、時期を解説
わんこをお迎えしたとき、避妊・去勢手術をするべきか悩む飼い主さんも多いのではないでしょうか?
避妊・去勢手術には、病気の予防や生活のなかでのトラブルを防ぐメリットがあります。一方で、手術のリスクや術後のふれあい方など注意するべき点もあります。正しい知識を身につけて、避妊・去勢手術をするかどうか判断しましょう。
この記事では、避妊・去勢手術の概要やメリット、デメリット、手術費用や手術時期について解説します。
目次
避妊・去勢手術とは
避妊・去勢手術は、わんこの生殖に関わる臓器を取り除く手術です。女の子の場合は子宮と卵巣を取り除く「避妊手術」、男の子の場合は精巣を摘出する「去勢手術」となります。この手術をおこなうことで、望まぬ妊娠を防ぐだけでなく、生殖器にまつわる病気や繁殖期にまつわるトラブルを防ぐことができます。
避妊・去勢手術のメリット
発情期にまつわるトラブルが減る
避妊・去勢手術をすることで、繁殖期にまつわるトラブルを減らすことができます。
わんこの性成熟は、生後6~12ヶ月ごろです。女の子は性成熟を迎えると、6〜10ヶ月の周期で生理が来るようになります。1〜2週間は陰部から出血するため、マナーパンツなどを履かせる必要があります。また、生理中は他のわんこを刺激することもあり、わんこ同士のトラブルも起きやすくなります。
男の子の場合、発情している女の子に誘発されて発情します。つねに発情できる状態にあるため、発情期の女の子に近寄ったり、落ち着きがなく攻撃的な行動をとったりしてしまうこともあります。
また、発情期同士のわんこがふれあうことで、互いに望まぬ妊娠をしてしまうこともあります。目を離した隙に、交尾をしてしまっていたなんてこともあり得ます。こういった発情期にまつわるトラブルや望まぬ妊娠を防ぐことができるのは、避妊・去勢手術の大きなメリットです。
病気を防ぐことができる
避妊・去勢手術をおこなうことで、シニア犬になったときの病気のリスクを少しでも減らすことができます。
女の子の場合、子宮と卵巣をとりのぞくことで乳腺腫瘍や、子宮蓄膿症、卵巣腫瘍などの病気を防ぐことができます。動物病院によっては、卵巣のみを取り除く避妊手術もあるので、事前に病院に確認しておきましょう。(卵巣のみ摘出の場合、子宮蓄膿症を防ぐことができないことがあります。)男の子の場合は、肛門周囲腺腫や前立腺肥大、会陰ヘルニア 、睾丸の腫瘍などの病気を防ぐことが可能です。
ストレスが減る
わんこの発情期にまつわる行動は、すべてわんこの本能的なものでトレーニングでコントロールできるものではありません。発情期のマーキングや異性のわんこに対する過剰反応は、わんこにとってもストレスになってしまいます。
避妊・去勢手術は、わんこが発情期に迎える攻撃的な行動などを防ぐことに繋がり、わんこの精神的な安定も叶えることができます。
避妊・去勢手術には、わんこ自身の生活をより快適なものにできるというメリットもあるのです。
避妊・去勢手術のデメリット
繁殖ができなくなる
避妊・去勢手術は、生殖に関わる臓器を取り除く手術になるため、当然術後は繁殖ができなくなります。繁殖したいという希望がある方は、手術を行うのは避けましょう。
手術のリスク
手術は、術前検査を行った上で全身麻酔で行います。避妊手術は開腹手術になるため、1時間、去勢手術の場合は30分ほど時間がかかります。
去勢手術でも、お腹の中に睾丸が残ってしまう「腹腔内陰睾(ふくくうないいんこう)」になっている場合、開腹手術となり1時間程度の時間を要します。
手術である以上、万が一のことがないとは言い切れません。術前検査を行い、万全の体勢を整えていたとしても、麻酔薬に対するアレルギー反応を起こしてしまうなど、亡くなるケースもあります。リスクがあることを理解した上で、避妊・去勢手術の実施を検討しましょう。
肥満のリスク
避妊・去勢手術を行うことで、生殖にまわるエネルギー量がなくなるため消費カロリーが3割ほど減少します。そのため、摂取カロリーと消費カロリーのバランスが取りづらくなり、太りやすくなる傾向があります。
避妊・去勢手術は1歳を迎える前の成長期に行います。この時期のわんこは食事制限せずに生活していることが多く、手術後も同じような食生活を続けていると、いつの間にか体重が増えてしまうことも。手術後は、食事量と運動のバランスに気をつけるように心がけましょう。また、避妊去勢後用のフードに変更することも検討しましょう。
尿漏れのリスク
生殖器官にまつわる病気が予防できる一方で、女性ホルモンや男性ホルモンが減少するため、外尿道括約筋の収縮力が弱くなります。 特に大型犬などで、睡眠中の尿漏れが起きてしまう可能性があります。
避妊・去勢手術ができるようになる時期
避妊・去勢手術の時期は生後6ヶ月前後が適切と言われています。最初の発情期を迎える前に行うことで、生殖器にまつわる病気やホルモン由来の異常行動を防ぐことができます。
また、避妊手術の実施時期が遅いと、乳腺腫瘍の予防効果が薄くなってしまいます。2歳半を越えてしまうと悪性乳腺腫瘍については効果なしという研究結果もあり、なるべく早期の手術が効果的です。
とはいえ、体が小さいうちは手術のリスクが大きくなってしまうため、ある程度成長した時期がオススメです。生後6ヶ月前後の時点で、一度かかりつけの動物病院に相談してみましょう。
避妊・去勢手術にかかる費用
避妊・去勢手術にかかる費用は、犬種や入院日数によって異なり4〜8万円が一般的です。動物病院によっても変わるため、かかりつけの病院に確認しましょう。
避妊・去勢手術の流れ
手術前
手術の日程に合わせて身体検査や血液検査、レントゲン検査を行い、全身麻酔で手術ができる状態か確認が必要です。術前検査で問題があった場合、手術日程の再設定や別の治療を開始します。
手術当日
麻酔薬により、嘔吐や誤嚥性肺炎を起こす可能性があるため、朝ごはんを抜いた絶食状態で病院へ向かいます。
注射と吸入ガス麻酔で全身麻酔を行い、術部の毛を剃って消毒をします。その術部を切開し、女の子は卵巣と子宮、男の子は精巣を摘出します。術部を縫い合わせて終了です。
近年、避妊手術を腹腔鏡手術で行う病院も増えています。傷口が小さく、負担が少ないなどのメリットがあるものの、費用が高額で、腹腔鏡を扱っている病院はまだまだ少数です。かかりつけ医と相談のうえ、検討するとよいでしょう。
手術後
体に負担のある手術となるため、避妊手術は1泊の入院になることが多いです。1日様子を見て、食欲や呼吸状態、排尿の有無などを確認して退院となります。去勢手術は多くの病院で、日帰りとなります。
避妊・去勢手術はお腹の傷を縫い合わせているため、抜糸が必要になります。抜糸までの1〜2週間は傷を舐めないように、エリザベスカラーや術後服を着用して過ごします。
術後の生活では、お散歩はおおむね可能ですが短時間のお散歩に留め、ドッグランなどの体を激しく動かすことは避けましょう。また、傷口が汚れないように注意が必要です。抱っこをする場合は、術創を押すような体制にならないように気をつけましょう。抜糸までは1日に1回程度、傷口を確認し、腫れや出血がある場合には病院へ相談しましょう。
- 避妊・去勢手術には病気や望まぬ妊娠を防ぐなどメリットもあるが、手術や肥満のリスクなどのデメリットもある
- メリット・デメリットを理解したうえで、家族で話し合って納得できる決断をする
- 手術時期は生後6ヶ月前後。かかかりつけの動物病院に相談を
- 費用は4〜8万円。かかりつけの動物病院に確認を
- 手術前に術前検査があり手術当日は絶食。手術後はお散歩や抱っこにも気を配る
避妊・去勢手術のメリット・デメリットや手術の具体的な時期、費用、流れについて紹介しました。気をつけるべき内容を理解した上で、手術の実施について検討しましょう。