わんこライフマガジン:日本スピッツと暮らすパステル画家のumiさん
UPDATE.2024.09.14
わんことのリアルな暮らしをお届けする企画「わんこライフマガジン」。今回ご登場いただくのは、日本スピッツの空くんと暮らすumiさんです。
パステル(顔料を棒状に固めた画材)で絵を描く「パステル画家」として活動するumiさん。自身の創作には、空くんの存在が欠かせないのだといいます。そんなumiさんに、空くんとの出会いや苦労、今の暮らしについて聞きました。(取材:2024年8月)
umiさん静岡県在住
空くんとの出会い
飼い主歴約30年のumiさん。空くんを含め、これまで4匹のわんこと暮らしてきました。最初に迎えたのは元野犬のわんこから生まれた雑種犬、タロくん。次にスピッツのきょうだい、ネロくんとマリアちゃんと約9年間過ごした後、空くんを迎えたのだそうです。
Q.まずはじめに、空くんとの出会いを教えてください!
umiさん
ネロとマリアと暮らしていたときに、「日本スピッツ協会」という団体とつながりができました。2匹は保護犬だったこともあって、お迎えしたときはすでに成犬。次に一緒に生活するなら、ぜひスピッツを子犬から育ててみたい!と思っていたので、日本スピッツ協会の方にいい子がいたら紹介してほしいとお願いしたんです。
Q.umiさんはわんこを飼うことについて大ベテランだと思いますが、お迎え前に不安だったことは?
umiさん
子犬と暮らすのは最初にお迎えしたタロ以来で、しつけがちゃんとできるかなという不安はありました。タロはあれこれ教えなくても問題ない子だったので…。
Q.実際にお迎えしてどうでしたか?
umiさん
大変でした。空はとにかく噛む子だったんです。普通の子犬は2ヶ月くらいだとまだまだあどけないと思うんですが、空は早々に自我が芽生えて甘噛みがひどく、訓練したほうが良さそうとアドバイスをもらい成犬向けのトレーニングに通いました。
首輪をしようとすると怒るし、お散歩の後に足を洗うだけで噛まれるので、豚皮の手袋を買ってみたり、泣きながらトレーナーさんに相談の電話をしたりしたこともありましたね…(笑)。空が怒って鼻にシワを寄せるのが私のなかでトラウマのようになってしまって、その顔を見るだけで心臓がバクバクしたり…。
Q.想像以上に大変そうです。どんなふうに乗り越えたのでしょう?
umiさん
何より「かわいい」が大前提なので耐えることができました。空もずっと怒っているわけじゃないんです。怒るのにはちゃんと理由があるし、むしろ噛む以外は完璧な犬。賢いし、我慢強いし、お留守番も一人で8時間できるし、お散歩でもきちんと人に従うし…。
それに、もう今がいい子すぎて、辛かったことは全部忘れてしまうほどなんですけどね。
Q.なるほど…!結局、トレーニングの成果はどうでしたか?
umiさん
全11回のトレーニングを2クールやって、人との上下関係をきちんと作ったことで、かなり噛んでいたのが何ヶ月かに1回程度になり、とてもよかったと思います。それに、去勢をしてからはほぼ噛まなくなりました。
状況に合わせてトレーニングに申し込んだり、自分で勉強して去勢の選択を取ったり基本的なしつけをしたりして諦めずに向き合うことで、犬との暮らしはすごくラクに、より楽しいものになるんだなとあらためて学びました。
空くんの性格
空くんはいつもumiさんにべったりの甘えん坊さんなのだそう。怖がりな性格ながら、「人にいっぱい触ってほしい!」という気持ちがあるようで、初めて会う人にも自分から近づいて行くそうです。
Q.人が大好きなようですが、「噛む」と聞いたのでギャップを感じてしまいます…!(笑)
umiさん
普段は本当にそんな感じなんです。さっきも言ったとおり、噛むのには理由があるんですよね。空の場合は、嫌なこと、怖いと感じること、予想がつかないことをされるのが苦手で噛んでしまうんです。
Q.空くんと接する上で、何か工夫はされていますか?
umiさん
とにかく声かけをするようにしています。たとえば、「抱っこするよ」と伝えてから抱き上げたり、体を拭く前は「お尻拭くよ」「手拭くよ」とどこを触るのか伝えたり。ちょっとした声かけで、空も落ち着いて身を委ねてくれるようになりました。
Q.ある程度、言葉を理解しているということですか?
umiさん
こちらが言うことはほぼわかっていると思います。犬の飼育書には、「外出前に犬に『いってくるね』と言ってはいけません、静かに家を出ましょう」なんて書かれていることもあるんです。
でも、空の場合はちゃんと言って出かけないとダメなんです。頭がいいので、私が化粧を始めると「どこ行くの?僕も一緒に行ける?」と興味津々。「ちょっとお出かけするから、空はお留守番していてね」と伝えると理解して素直に従ってくれます。こんなふうに、繊細で意思疎通がちゃんとできるところが、私がスピッツにハマった理由でもあるんですよね。
1日の生活
umiさん夫婦の生活ペースに合わせながら、ゆったりと過ごしている空くん。
1日の生活について、教えていただきました。
朝 | 休日はもう少し遅めですが、平日の朝は7時前後に旦那さんとお散歩へ。 帰宅後、ごはんを食べます。 その後はumiさんが1階に居るときはその近くで、2階のアトリエにいるときはリビングで寝ています。 |
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昼 | umiさんの昼ごはん後、ささみジャーキーをもらいます。 午後、umiさんが2階のアトリエにこもって2時間くらい経つと寂しそうに鳴き始めることも…。制作が一段落して1階に下りてくると、大喜びでお出迎えします。 |
夕方 | 冬は17時ごろ、夏は19時ごろにumiさんとお散歩へ。 いろんな人にちやほやされたいタイプなので、家の中で静かにいい子でいる反動でお散歩中に人や犬に会えると喜びます。 お散歩の後は、ブラッシングと歯ブラシ。その後、夕ごはんを食べます。 |
夜 | umiさん夫婦の夕食後、再びささみジャーキーをもらって食べます。 就寝時間までリビングで寝て過ごしたり、おもちゃを投げて遊んでもらったり、お腹を撫でてもらったりしています。 寝るときは、umiさんに抱っこされて撫でてもらってからケージまで運んでもらい、眠りにつきます。 |
Q.ささみジャーキーが好きなんですね。
umiさん
そうなんです。私たちがごはんを食べ終わったらあげることにしていて、食事中は「まだかな?」とじっと横で待っています。「お箸を置いた音=ごちそうさま」だと理解しているので、たまに途中で手を休めると「ごはん終わった?」とまだ食べているのにニコニコ笑顔で催促してきます(笑)。
Q.umiさんがアトリエで絵の制作をしているときは、一緒にいないのでしょうか?
umiさん
画材の粉を吸い込んで肺を傷めたらいけないと思って、基本的に2階のアトリエには入れないようにしています。なのでふだんは1階で待っていて、私が下りてきて手を洗ったら「今日のお仕事はおわりなんだね!」と大喜びしてくれるんです。
Q.その代わり、夜は寝るまで一緒なんですね!
umiさん
毎晩抱っこして「かわいいね」「いつもありがとう」「空がいるだけで幸せだよ」とメッセージを伝えながらしばらく撫でて、ケージに入れています。そうすると空もうれしそうな顔をしてうとうとするので、その後幸せな気持ちで眠れるかなと思ってずっとやっているんです。
お金事情
歯の治療をしたことがある空くん。
1ヶ月にかかっている費用などについて、教えていただきました。
フード・おやつ代 | 15,000〜16,000円 |
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医療費 | 月によってまちまち |
トリミング・お手入れ費用 | 7,000円 (シャンプーは1ヶ月半に1回、爪切りは2回) |
保険料 | 年16,500円 |
Q.これまでに何か大きな出費はありましたか?
umiさん
奥歯の治療に約30万円かかったことがあります。Instagramで「犬のデンタルケアに鹿の骨を食べさせたらすごくよかった」と言っている人がいて、犬の奥歯は硬いものを食べると割れやすいことは知っていたものの、試してみたら案の定割れてしまって…。
Q.病院ではどんな治療をしたのでしょうか?
umiさん
割れた歯を温存できないかと思って他県の犬の歯の専門医に診てもらったところ、抜歯せずにレジン(樹脂)で修復する方法を勧められました。術前検査でレントゲンや血液検査などをして、問題ないことが確認できたらその1週間後に手術をするという流れでした。
全身麻酔で処置して、ついでに歯全体をクリーニングもしてもらいました。無事に終わったのでよかったですが、そのときは保険に入っていなかったこともあって、けっこうな出費でしたね。
わんこと暮らしてよかったこと
最後に、空くんがパステル画家としての活動にどんな影響を与えているかも伺いました。
Q.空くんをモチーフに絵を描いたことはありますか?
umiさん
実は、空そのものを描いたことはないんです。先代のネロとマリアは絵にしたことはあるのですが…。
▲ネロくんモチーフの「ぼくのきもち(2012)」
Q.意外です。いったいなぜなのでしょう?
umiさん
やっぱり身近すぎるものをモデルにすると、抽象化しにくくて想像の幅が狭まってしまう気がして。だから2013年ごろからは猫や鳥など、別の動物をよく描くようになりました。
▲猫を描いた「夢想(2023)」
でも、空をまったくモデルにしていないわけではないんです。私の作品には「ワンダー」と名付けたワニがよく登場するのですが、ワンダーの表情を考えるときには、よく空の寝顔を思い出します。空が気持ちよさそうに目をつぶっている顔をワンダーに投影することで、よりかわいく、柔らかい雰囲気が出せると思っています。
▲空くんの寝顔をモデルに描いた「雲までとどいたら(2020)」
Q.umiさんの絵の作風に、空くんが一役買っているということでしょうか。
umiさん
そうですね。私、あまり優しいタイプの人間じゃないんです。それでも絵で柔らかい雰囲気が出せるのは、やっぱり空と触れ合って、心が柔らかくなるからだと思っています。
私が絵を描けるのは空のおかげ。空には感謝の気持ちでいっぱいです。
▲「第68回新世紀展」にて新人賞を受賞した「望月」(左)と入選を果たした「残月」(右)と一緒に
Q.最後に、わんこと暮らしてよかったことをあらためて教えてください。
umiさん
お迎えした当初は苦労もしましたが、それを忘れてしまうくらいに空は私たちの心を満たしてくれています。「大好きだよ!」と毎日全身で伝えてくれるので、心の安定にもつながっているんです。
犬は本当に優しくて、尊い生き物です。一緒に暮らしていると、大変なこともあるかもしれません。でもそのたびに辛抱強く向き合うことが大切です。日々の暮らしのなかで信頼関係を築いて、お互いに心地よく過ごせるようになれば、犬は人生の最高のパートナーになってくれると感じています!
◼︎umiさんの他の作品はこちらから
Instagram→https://www.instagram.com/umipastel/
公式サイト→https://umipastel.wixsite.com/pastel
PROFILE
あやこあにぃ
元測量士、かつてクマの研究もしていた動物好きのWebライター&作家です!インタビュー記事やコラム、小説など、幅広く執筆活動中です。